CMB偏光観測のための前景放射分離・除去法

  • 前景放射について

インフレーションモデルの検証のため、次世代のCMB偏光観測実験では高精度なBモード偏光の観測が求められています。そのため、我々は観測データから前景放射を分離・除去する手法の開発を行っています。

このページでは前景放射分離・除去の研究について詳しくご紹介します。
まず初めに、前景放射は宇宙に存在するマイクロ波を指しますが、観測の妨げになるのは、天の川銀河に存在する天体からの放射になります。これらの前景放射はCMBのB モード偏光よりも強度が非常に強く、大角度スケールに渡って偏光しています。前景放射の主な成分として、低周波側ではシンクロトロン、高周波側ではダストが支配的になっています。前景放射の偏光強度はCMBとは異なり、以下の図のように周波数依存性を持っています。

ダスト(Dust)
銀河系内の星間塵(ダスト)は、磁力線に対して垂直に整列しやすい特性を持っています。このため、熱放射ダストは特定の偏光成分を持ちます。具体的には、ダスト粒子が磁場に沿って整列することで、放射光の偏光が生じ、その偏光の方向は磁力線に垂直になります。

シンクロトロン(Synchrotron)
シンクロトロン放射は、相対論的な電子が銀河磁場の中で螺旋運動することにより発生する放射です。この運動により、電子は広範囲の周波数で電磁波を放出し、結果として偏光を持つ電波が観測されます。この偏光の特性は、電子の速度や磁場の強さと方向に依存します。

  • 前景放射を分離・除去するには?

前景放射を分離・除去するためには、様々な物理的仮定や数学的手法を用います。これまでに、前景放射の分離手法として多種多様な手法が開発されてきましたが、大きく分けて、パラメトリックとノンパラメトリックの二つに分類することができます。

パラメトリック手法:

ノンパラメトリック手法: