研究ハイライト

強磁性量子臨界物質CeRh6Ge4における異方的交換相互作用

4f電子系化合物CeRh6Ge4は、低温で強磁性を示す物質で、さらに外部から圧力をかけると、強磁性転移温度が絶対零度に向かって下がっていく「量子臨界現象」を示します。量子臨界現象は、量子力学的なゆらぎの効果が顕著になる現象ですが、これが強磁性で観測されることは珍しいとされています。なぜなら、一般的には圧力によって量子ゆらぎが強まり、強磁性そのものが壊れてしまうためです。そのため、この化合物において量子臨界現象が観測できているのはなぜなのか注目されていました。

我々は「動的平均場理論」と呼ばれる方法を用いて、CeRh6Ge4における強磁性ゆらぎを調べました。その結果、局在的な4f電子を出発点とすることで強磁性を再現することに成功し、さらに、強磁性を引き起こす4f電子間の相互作用が強い異方性をもつ(スピンの向きに依存する)ことを見出しました。スピン間の相互作用が異方的な場合には、量子ゆらぎが強くても強磁性が壊れにくいことが知られています。つまり、CeRh6Ge4では、この異方的な相互作用が強磁性を保ち、その結果として量子臨界現象が実現していることがわかりました。

S. Itokazu, A. Kirikoshi, H. O. Jeschke, J. Otsuki
Comm. Mater. 6, 269 (2025)-Published 25 November, 2025

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