研究ハイライト

アルカリ超酸素化合物における軌道秩序とフラストレート磁性

アルカリ超酸素化合物AO2 (A=Na, K, Rb, Cs)は、酸素分子イオンO2が「スピン」と「軌道」の自由度をもつ強相関化合物です。中でもCsO2では、温度が70ケルビン以下になると、磁気的な相関が急激に強くなることが知られていましたが、その起源がわかっていませんでした。我々は、第一原理計算により得られたエネルギーバンドを元に有効モデルを構築し、その解析を行いました。その結果、低温で軌道の並びが整列する「軌道秩序」が起こり、その影響によりスピンの幾何学的なフラストレーション効果が顕著になることを明らかにしました。

これまで、軌道秩序が起こることでスピンのつながり方がより単純になり、事実上「一次元的な」ネットワークに近づく物質の例はいくつか知られていました。しかし、逆に軌道秩序のためにスピンのネットワークがより複雑になる例は非常にまれです。今回の研究では、CsO2がその珍しいケースに当てはまる可能性を初めて指摘しました。

この研究成果を掲載した論文は、アメリカ物理学会が出版する Physical Review B 誌において、Editors’ Suggestion に選ばれました。

K. Shibata, M. Naka, H. O. Jeschke, J. Otsuki
Phys. Rev. B 109, 235115 (2024) -Published 7 June 2024

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