金属中に磁石のもとになる磁性原子があると、磁場によって磁石の向きがそろうために、電気抵抗が磁場で減少します。
このような磁気抵抗効果は大きいほど応用上有用ですが、もし分子性物質でも実現できれば有意義です。
これまでにフタロシアニン分子(図1)から構成される分子性物質において、
巨大な磁気抵抗効果(磁場による電気抵抗の減少、図2)を発見しました。
この現象は、1つの分子に電気を流す性質と磁石の源(磁性)の両方の性質を作りこむ事で、
両者の相互作用を増幅できた事に由来しています。
今後、メカニズムの解明を通じて特性を向上させて、分子性磁気検出素子への応用が開ける可能性もあります。
(参考:固体物理43, 795 (2008).)

図3のように、3角格子上にスピンがある状況を考えます。スピン間の相互作用が反強磁性的である場合
(スピンがお互いに反対方向に向きたがる場合)、3個のスピンの向きが一意に定まる安定なスピン状態はありません。
このような状態では電子系にフラストレーションが存在しており、外からのわずかな摂動で物質の性質が大きく変化する事もあります。
例えば、図4に示すように三角格子を含むパイロクロア型酸化物でも、磁場を加える事で電気抵抗の大きな減少が観測されています。
(参考:Phys.Rev.Lett. 96, 116403 (2006).)
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