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岡山大学理学部物理学科 准教授 石野宏和のページです。

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コラボレーション棟603号室

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岡山大学理学部

挑戦的萌芽(平成24-25年度)

予算名:科学研究費補助金
種目:挑戦的萌芽研究
期間:平成24-25年度
タイトル:「超伝導技術を利用した実時間太陽ニュートリノ観測装置の開発」

概要

超伝導検出器の一種である力学的インダクタンス検出器(Kinetic Inductance Detector, KID) を用いた実時間太陽ニュートリノ観測装置の開発を行った。 1976年にRaghavanはIn-115を用いることにより、バックグラウンドフリーで ppニュートリノ観測が可能であることを指摘した。 本研究では、In/Al/Nbを組み合わせたKIDを作製し、 その検出器の原理検証・性能評価を行うことを目的とする。

この研究の主要な開発ポイントは、(1)Al層におけるフォノン信号の検出と(2)InをKIDにはりつける 技術開発である。 Al/Nbの2種の薄膜からなるKIDは、リソグラフィー技術を用いて、高エネ研の 超伝導検出器作製装置群を用いて作製可能である。 まず(1)を検証するために、Al/NbからなるKIDを作製し、シリコン基板にα線を照射することにより フォノン信号の検出を確認した。 フォノン信号の検出原理は確認したが、 Alの部分にInを装着し、Inからのフォノンを受信するのであるのが目的であるので、 このままではシリコン基板からのフォノン信号がバックグラウンドとなってしまう。 そこで、Al層とシリコン基板の間に酸化アルミニウム層を挿入することにより、 基板からのフォノン信号をブロックすることに成功した。 次に(2)の技術開発を行った。 Al層の上に低融点半田(In/Sn)を取り付けることを試したがなかなかうまくいかなかった。 最終的に、産総研の山森さんに助けて頂き、金の薄膜を間につけることのより、Inをとりつけることに 成功した。 KIDを0.3Kまで冷却したところ、70%の歩留まりを確認した。 Q値は最大30000であった。 共振周波数の温度依存性を測定することにより、検出器の感度を測定したところ、 100keV相当のエネルギー付与による位相のずれは4.9度とわかり、十分な性能を 有することがわかった。

今回とりつけに成功したInの量は、2マイクログラムと微量なために、このままでは 太陽ニュートリノの観測を行うことができない。 今後は、マッシュルーム型のIn標的を装着する技術を開発する必要がある。 実際、アメリカのNISTは、1ミリ角の錫標的を100ミクロン角のTESにとりつけており、 この技術は不可能ではない。

また、今回の研究開発において、初期の段階でNbのみからなるKIDを用いて、 デザインの最適化を行っていた。外部から冷凍機内部に光ファイバーを通し、 光に対する応答から、感度の測定を行った。 当初は、大変感度が悪かったが、デザインの最適化を繰り返すうちに、 感度を3桁ほど改善することができた。 この技術によって、将来光検出器としても応用可能であることを見出した。

論文・雑誌リスト

A. Kibayashi, M. Hazumi, H. Ishino, Y. Kibe, S. Mima, C. Otani, N. Sato, H. Watanabe, Y. Yamada and M. Yoshida,
"Development of the Superconducting Detectors for Applications to Particle Physics and Astrophysics"
JPS Conf. Proc. 1 (2014).
H. Ishino, A. Kibayashi, K. Hattori, M. Hazumi, Y. Kibe, S. Mima, N. Sato, M. Yoshida and H. Watanabe,
“Development of Microwave Kinetic Inductance Detectors for a Detection of Phonons",
Journal of Low Temperature Physics, publised online (2014).
石野宏和、羽澄昌史、樹林敦子、岐部佳朗、美馬覚、佐藤伸明、吉田光宏、渡辺広記、 「MKIDと宇宙・素粒子実験への応用」 信学技報 IEICE Technical Report, SCD2013-22, 2013, pp17-20.
石野宏和、羽澄昌史、美馬覚、吉田光宏、超伝導検出器の開発、 高エネルギーニュース、32巻、2013年、24-33ページ.

学会発表リスト

日本物理学会
春季大会
東海大学
2014年3月29日
検出効率を改善した超伝導フォノン検出器の開発 石野宏和
電子情報通信学会
超伝導エレクトロニクス研究会
東北大学
2013年10月2日
(招待講演) MKIDと宇宙・素粒子実験への応用 石野宏和
日本物理学会
秋季大会
高知大学
2013年9月22日
Microwave Kinetic Inductance Detector (MKID)の可視光反応の研究 山田要介
APPC12 Makuhari, Chiba
Jul. 14-19, 2013
Development of Superconducting Detectors for Applications to Particle Physics and Astrophysics Atsuko Kibayashi
LTD15 Pasadena, USA
Jun. 24-28, 2013
Development of Microwave Kinetic Inductance Detectors for a detection of Phonons Hirokazu Ishino
日本物理学会
春季大会
広島大学
2013年3月29日
MKIDの可視光反応の研究 山田要介
日本物理学会
秋季大会
京都産業大学
2012年9月14日
ニオブMKIDの基礎特性 山田要介
日本物理学会
秋季大会
京都産業大学
2012年9月14日
ニオブとアルミニウムを組み合わせたストリップ型MKIDの開発 湯浅泰気