平成15年度 第4回
物理教室談話会


題目 リニアコライダーの推進と素粒子物理学
講師 駒宮 幸男  氏    
( 東京大学理学系研究科 教授 )
日時 6 月 12 日(木)16:00 - 17:30

(第3回談話会と順序が前後しているのでご注意ください.)
場所 コラボレーションセンター 3階 コラボレーション室
岡山大学津島キャンパス内
要旨  素粒子物理学は今大きな転換点に立っている。現在の「標準理論」を大きく超える パラダイムの転換が次世代の最高エネルギーの加速器によって確実にもたらされる であろう多くの証拠がある。素粒子の「標準理論」は、現在まで観測されている素 粒子現象を正しく記述しいる様に見えるが、とても究極の理論とは考え難い。より 高いエネルギーの素粒子反応を実験することは、高温即ち高エネルギーの宇宙の初 期により近づくことであり、宇宙初期において普通に起っていた素粒子反応を一瞬 実現することである。一方、最近の宇宙の観測によって宇宙のエネルギー組成が解 明されだした。これらの観測によると、宇宙のエネルギー密度の殆どは、暗黒エネ ルギー(約74% )や暗黒物質(約23%)が、占めていることが分かってきた。 これらの起源を素粒子物理に求める試みも行なわれつつあり、極微の世界を探求す る素粒子物理と壮大な宇宙物理は、もはや一つの大きな学問分野として融合されつ つある。電子・陽電子リニアコライダー「GLC」は、これらの原理的な物理の問題 のいくつかに正確な解答を与える画期的な加速器である。特にヒッグス粒子は、 LEPの実験などで軽いことが分かり、パラメータ空間の角に追い詰められ、その 発見と質量や真空構造の原理的な解明は次世代の加速器が担う。軽いヒッグス粒子 は、時空の新たな対称性である超対称性理論を示唆するので、この発見や詳細な解 明も次世代の加速器が担うと考えられる。 文化創造立国、科学技術創造立国を標榜しているわが国にとって、このような画期 的な加速器を国際協力でわが国に建設することは極めて自然である。現在の産業界 にとって、ナノテク、IT、バイオテクノロジー、環境などは重要であり、国はこ れらをその基盤から底上げする必要がある。加速器技術はこれを可能にする重要な 手段である。リニアコライダーはまさに、これらの重点技術分野の基盤を組織的に 底上げするプロジェクトである。



 
世話人 理学部物理学科  田中 礼三郎  (TEL: 086-251-7805) 



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