平成14年度 第11回
物理教室談話会


題目 励起子気体のボース・アインシュタイン凝縮(BEC)研究の新展開
講師 長澤 信方 氏(東京大学大学院理学研究科教授)
日時 12 月 3 日(火)16:30 - 18:00
場所 コラボレーションセンター 3階 コラボレーション室
岡山大学津島キャンパス内
要旨  半導体の励起子は、電子と正孔が水素原子のように束縛した電子励起状態の準粒子である。レーザーのような光子密度の高い光源によって高い密度で励起子を作ると、この準粒子のボース統計性によって、BECが実現するといわれて久しい。一方、アルカリ原子系では、レーザー冷却、蒸発冷却など、極端に運動エネルギーを抑えた冷たい原子を人工的に操作する技術によってBECが実現され、その成果はノーベル賞の対象となった。
 半導体の励起子系では、これまで各種の試みにもかかわらず、万人が納得するような決定的な実験的証拠を見出すことは出来ていない。しかしながら、今年になってにわかにその状況が変わりつつある。一つは量子井戸系によって、高密度励起子系で期待されるボース統計性を反映した光学現象が見つかり、また不思議な自己組織形成を暗示する現象がButovらによって発表された。また、Yamamotoらによる励起子ポラリトンのBECにかかわるのではという現象も最近発表された。
 我々はおよそ10年前から、原子系におけるBECの成功を導いたと類似の手法によって、半導体亜酸化銅結晶の励起子系のBECを実現するという正攻法に徹した研究を続けてきた。 これは2光子励起によって冷却高密度励起子系を励起子捕獲トラップの底に作り、励起子BECに関する決定的証拠を実験によって得ることである。 近年、トラップの形状やエネルギー構造を任意に設計し評価する2光子分光法を確立した。また、最近、BEC検証のための本格実験を行うことができた。ここでは、この分野の現状の報告と、我々のごく最近の研究成果から、励起子系のBECに対するポジティブな結果の一部を紹介する。


 
世話人 理学部物理学科 有本 收(TEL:086-251-7821)



談話会indexページへもどる
物理学科  へ戻る