平成13年度 
物理教室談話会


題目 量子スピン系TlCuCl3及び関連物質の磁性励起と相転移
講師 田中秀数  氏
   (東工大院理工学研究科)
日時 7 月 26日(木)16:00〜18:00 
場所 コラボレーションセンター3階 コラボレーション室
岡山大学津島キャンパス内
要旨  絶縁体の磁性を記述するスピン系の研究は長い歴史をもっているが, 近年は量子効果が顕著で物理現象が古典スピンモデルでは定性的に 説明できない系(量子スピン系)の研究が盛んになってきている. 物質の面からみると,磁性原子の種類と空間配列が量子磁気現象の 発現に深く関わっている. 本セミナーで扱うTlCuCl3やKCuCl3は化学的2量体(ダイマー) Cu2Cl6が鎖構造をなすように積層した構造をもつ物質である. これらの磁気的基底状態は,ダイマー内の強い反強磁性交換相互作用を 反映して励起ギャップをもつ1重項状態となる. 本セミナーでは,以下の3つの問題についてお話したい.
 (1) 磁気励起. 我々のグループの他にETHでも精力的に行われているTlCuCl3と KCuCl3の中性子散乱による磁気励起の研究を紹介し,有効ダイマー 相互作用による解析や,最近Mikeska教授らによるクラスター展開による 解析結果について述べる.
 (2) 磁場誘起相転移とマグノンのボース・アインシュタイン凝縮. 強い磁場を加えるとギャップが潰れるために,温度を下げると秩序状態へ 相転移が起こる.この磁場誘起相転移の実験結果と,この相転移を励起3 重項(マグノン)のボース・アインシュタイン凝縮と捉える理論について紹介する.
 (3) 不純物及びランダムネスと相転移. 上記2つ物質の混晶系Tl1-xKxCuCl3では,交換相互作用に ランダムネスが入る.このランダムネスが磁性(磁化率や磁場誘起相転移) に及ぼす影響について述べる.また,非磁性原子Mgで磁性原子Cuを希釈 した系TlCu1-xMgxCl3では,不純物誘起反強磁性相転移が観測 された.このことについての実験結果も紹介したい. 
  
世話人 理学部物理学科  原田 勲   (TEL: 086-251-7808)



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