平成13年度 
物理教室談話会


題目 高エネルギーX線回折による酸化物ガラスの精密構造解析
講師 鈴谷賢太郎  氏
   大学院自然科学研究科客員助教授(原研放射光)
日時 7 月 12日(木)16:00〜18:00
場所 コラボレーションセンター3階 コラボレーション室
岡山大学津島キャンパス内
要旨 液体やガラスなどの非晶質物質は、その原子配列に周期的な規則性をもたないため、 回折実験では、隣接原子間距離および配位数に代表されるいわゆる短範囲構造のみが 実験的に求められるにすぎず、結晶の様に広範囲でかつ精密な構造解析を行うことは 不可能である。従って、これまで、非晶質物質の構造解析は、材料のキャラクタリゼ ーションの意味合いしかもたないことが多く、その短範囲構造に関する知見が、物性 の解明やあるいは非晶質材料の材料設計に、定量的に利用されたということはあまり ない。 我々は、ここ数年、非晶質物質の物性の予測、材料設計に利用できる様な構造モデル を提出することを目指して、より正確で大きな構造モデルを回折実験によって決定す る仕事を行ってきている。 SPring-8では、従来のX線源や放射光源よりもはるかに高いエネルギーのX線が利用 できる。高エネルギーX線は、波長が短く高い透過性を持つため、吸収補正や多重散 乱補正が小さくて済み、非常に高い散乱ベクトルQまで回折パターンを精度良く測定 することができる。こうした広いQ範囲のデータは、従来、パルス中性子回折によっ て得られていたが、この高エネルギーX線回折(HEXRD)では、非常に少ない量の試 料で中性子とは相補的なデータが得られる。 本講演では、このHEXRD法による酸化物ガラスの精密な原子分布の決定、またパルス 中性子回折法、計算機シミュレーション(逆モンテカルロ法)との組み合わせによる 、これまで困難であった中距離構造の決定について述べ、これからの非晶質物質の構 造解析と高エネルギーX線回折の今後を展望する。
 
  
世話人 理学部物理学科  黒岩 芳弘   (TEL: 086-251-7816)



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