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50年前に発明された円形加速器(シンクロトロン)は、今や、原子核・素粒子実験のみならず放射光施設や医学利用施設にまで普及した。その基本原理は、荷電粒子の軌道にタイミングを合わせて(シンクロする)、正弦波の電圧を掛けることにより、粒子を加速します。しかし、パワー半導体技術の進歩により、矩形電圧を粒子の周回に合わせて発生することが可能になりました。これを利用し、正弦波の代わりに矩形電圧を使い粒子を加速するという原理の実証実験が、つくばの高エネルギー加速器研究機構の加速器研究施設の高山健教授をリーダーとするグループにより、2004年11月に行われ、成功しました。これにより、円形加速器のビーム強度が飛躍的に向上し、これまでのシンクロトロンでは不可能であったビーム操作も可能になると期待されています。この計画は、1999年に将来のニュートリノ振動実験のための加速器増強のための開発として、高山氏によって考案されました。岡山大学の作田教授(当時KEK助教授)は、その計画を、物理の立場から支援し、その素粒子実験への応用を考え、共同研究してきました。2003年には、この計画(誘導加速)は、文部省学術創成研究(5年間)に認定され、続々と成果を挙げています。加速原理成功の論文は、Physical Review Letters 誌(2005年4月)に掲載され、2005年1月7日の共同通信社から発信され、西日本新聞、中日新聞、河北新報等に取り上げられました。2005年4月には、高エネルギー物理のニュース雑誌である、CERNCOURIERでも、「陽子加速器の原理を書き換える。」と記事になりました。現在は、実際の加速器ビーム増強とその物理実験への応用のみならず、医学利用への応用も開発しています。
- K.Takayama,J.Kishiro,M.Sakuda,Y.Shimosaki,W.Wake, Phys.Rev.Lett.88,144801,2002.(原理)
- K.Takayama, M.Sakuda, et al., Phys.Rev.Lett.94,144801,2005.(実証実験成功)
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