岡山大学理学部物理学科
[大学院自然科学研究科・数理物理学科専攻・先端基礎科学専攻]
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  世界最強磁場での放射光X線実験に成功
   放射光X線や中性子線などの量子ビーム(注1)と強い磁場の組み合わせは、新しい材料・物質研究の強力な道具として注目されており、そのための計測技術の開発には世界的な規模で競争が行われています。
 我々の研究グループでは、SPring-8のビームラインBL22XUにおいて平成17年12月、放射光X線実験における世界最高磁場記録を樹立しました。この成果は、磁場発生用マグネットの小型化技術の追求により達成されました。 従来、強い磁場の発生には大型装置が必要とされてきましたが、今回使用したマグネットは、体積および消費エネルギーが従来型の大型マグネットの 約100分の1の親指サイズの超小型マグネットであり、しかも大型マグネットと同等の50テスラ級の超強磁場が発生できる画期的なものです。 これを用いることで、量子ビーム実験において従来の世界最高であった超電導磁石による世界最高値を3倍も上回る51テスラ(注2)という 強い磁場中での放射光X線実験に初めて成功しました。
 今回の実験では、希土類元素を含む磁性体の価数揺動(注3)と呼ばれる現象をX線を用いて直接観測し、磁場中での電子状態を初めて明らかにしました。この技術は、21世紀の新機能デバイスとして注目されているスピントロニクス材料(注4)の評価や原理の理解にも大きく貢献すると期待されます。本研究は、岡山大学、日本原子力研究開発機構、東北大学の共同研究であり、科学研究費補助金・特定領域研究「100テスラ領域の強磁場スピン科学」の一貫として行われました。
 本研究成果の一部は、学術誌Journal of the Physical Society of Japan 75 (2006) の2月号に掲載され、2006年3月に愛媛県松山市で開催される日本物理学会で発表予定です。

(注1)物質の量子化されたエネルギー状態を探査可能な光や粒子(中性子、電子、ミュー粒子など) を指向性を持たせてビーム状にしたものを指す。
(注2)テスラは磁場の強さを表す磁束密度の単位。地磁気は約10万分の4テスラであり、51テスラはおよそ地磁気の125万倍。
(注3)ユーロピウムやイッテルビウムなどの希土類元素を含む磁性体でしばしば見られる現象。希土類イオンの固体中での価数が不安定になり量子力学的に揺らいでいる状態で、様々な磁気的、電気的な異常を発現する原因となる事から盛んに研究されている。
(注4)電子の電荷だけではなくスピンを能動的に操作した新しいデバイスの総称。半導体と金属の両研究分野において開発が進められている。
冷凍機のインサートの先端に取り付けられたミニマグネット。 実験中は測定試料とともにヘリウム温度まで冷却される。太さ0.7ミリメートルのAgCu線を使用したソレノイドコ イルであり、外側をガラス繊維で補強してある。(そのため、写真では白っぽく見えている。)フ ランジはFRP製。右側は10円硬貨。
冷凍機のインサートの先端に取り付けられたミニマグネット。 実験中は測定試料とともにヘリウム温度まで冷却される。太さ0.7ミリメートルのAgCu線を使用したソレノイドコ イルであり、外側をガラス繊維で補強してある。(そのため、写真では白っぽく見えている。)フ ランジはFRP製。右側は10円硬貨。
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