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野上 研究室
イメージングプレートX線回折装置    低温4軸回折計    単色ラウエカメラ
ガンドルフィカメラ    低温強磁場X線回折カメラ    放射光の利用
キーワード :  X線
野上研は、有機超伝導体をはじめとする、低次元物質と強相関系物質の結晶構造や電荷配列を調べることにより、極端条件下で現れる物性の発現理由を調べています。
このため、極端条件下(たとえば極低温、強磁場、高圧)で、精密に構造を測定可能なX線装置を、開発し所有しています。
野上研にあるX線装置は、数量、質ともに世界でトップクラスです。
 
R-axis W イメージングプレート(IP) X線回折装置 (大学院Venture Business Laboratory棟)
試料により回折されたX線はイメージングプレート(IP)と呼ばれる高ダイナミックレンジフィルムに記録されます。 IPを現像すると左下の写真のような画像となり,X線の回折角と、回折強度を高速に読み取り可能です。
回転機構に試料がマウントされ,多数の反射点が短時間で観測可能です。また結晶による吸収は簡単に補正可能で,精密構造解析が可能です。
窒素ガス吹き付け装置またはヘリウムガス吹き付け装置を組み合わせると,数時間の測定で20Kまでの低温精密構造解析が可能です。 この,吹き付け装置には窓が無いため,窓からのX線散乱が生じません。このため高感度になり,様々な変調構造や超格子構造が観測され,超格子構造を解析する事も可能です。 吹き付け装置に限らず,我々はヘリウムを用いた独自のX線用クライオスタットを多数開発しています。
 
低温4軸回折計 (大学院棟)
4軸回折計では4本の独立な回転軸を持つため,広い逆格子空間を精密に計測する事が可能です。 また,大型であるため,極低温用クライオスタットや圧力セルなど様々なアクセサリを装着可能です。 高感度で角度分解能が高く,特に微弱な変調構造(例えば電荷配列による超格子)信号を観測する事もできます。 この低温4軸回折計はHUBER5042と呼ばれ先端放射光施設などに設置されていますが,大型で操作や管理には熟練が必要なため, 世界的にも一研究室で運営している例はきわめて稀です。この装置は10K付近での測定が可能です。
 
単色ラウエカメラ
微弱な構造変化を詳細に測定するためには,上記の大型4軸回折計が有効です。しかし大型4軸回折計では分解能は高いのですが, 同時に観測できる範囲は非常に狭くなります。従って,どこに出るか不明なX線信号を検出するためには,高感度で広い範囲を同時に撮影可能な装置が必要です。 単色ラウエカメラは,X線の巨匠フランスのギニエ教授によって開発されたカメラです。集光法を用い,窓からの散乱を徹底的に抑える設計のため, 毎秒0.1cps程度の微弱信号が計測可能で,これまで知られている, TTF-TCNQ,K0.3Mo03,CuGeO3,NaV2O5などの変調構造は,容易に短時間で観測可能です。 開発にノウハウが必要なため,現在稼働しているのは当研究室以外では,世界でも5台程度です。 我々は,ギニエタイプを改良し,試料回転の自由度を増したものや, 10Tの磁場中でも使用可能なものや,強電場下カメラを開発し,合計4台の単色ラウエカメラを所有しています。
 
ガンドルフィカメラ
本装置は試料を回転させる軸が2つあり、2軸同時回転により回折パターンを記録していきます。 2軸同時回転することによって、 方位が確定不可能な結晶からのX線回折点が擬似的に粉末X線回折線として観測されます。この手法を用いて世界で初めてトポロジカル結晶の構造解析に成功しました。 トポロジカル結晶とは北海道大学の丹田教授らによって開発された,リング,8の字,メビウスの形をした結晶です。右図下にガンドルフィカメラで撮った写真を掲載しています。
 
低温強磁場X線回折カメラ
本装置は、強磁場をかけながら、なおかつ低温で、X線を使用して、試料の構造を調べることができます。 試料は寒剤不要型の10Tの超伝導マグネットに挿入され,試料に直接、低温のヘリウムガス(もしくは窒素ガス)を吹き付け、低温を実現します。 試料は磁場中でも使用可能な超音波モータによって回転します。強磁場でIPを使って構造が調べられる世界初の装置です。
 
放射光の利用
上記のような装置による大学内での測定の他,野上研では,近隣のSPring-8をよく利用しています。 最近ではマシンタイムは年間30日程度にも達しています。ただ利用するだけではなく, 上述のガンドルフィーカメラの他,クライオスタットなどの装置開発にも貢献しています。