論文リスト(コメント付き):

  1. M. Ichioka, N. Hayashi, N. Enomoto and K. Machida:
    "Fundamental properties of a vortex in a d-wave superconductor,"
    J. Phys. Soc. Jpn. 64 (1995) 4547-4551. [link]

      磁場中のd波超伝導体において形成される渦糸コアの 構造を、準古典グリーン関数法を用いて解析し、渦糸 まわりの超伝導対関数(ペアポテンシャル)・超伝導 電流・磁場分布について、d波超伝導体に特有の四回 対称性をもつ構造が現れることを明らかにした。

    • 1996:
  2. M. Ichioka, N. Enomoto, N. Hayashi and K. Machida:
    "s- and d_{xy}-wave components induced around a vortex in d_{x^2 - y^2}-wave superconductors,"
    Phys. Rev. B 53 (1996) 2233-2236. [link]

      d_x2-y2波超伝導体における渦糸コア構造について、 ペアポテンシャルに混成してくるd_x2-y2波成分以外の 他成分が示す、特徴的な空間構造を明らかにした。

  3. K. Machida, M. Ichioka, N. Hayashi and N. Enomoto:
    "Vortex core structure and possible pairing mixture in d-wave superconductors,"
    Physica C 263 (1996) 428-430. [link]

      論文 [1] の計算を、ペアポテンシャルに関して 自己無撞着なものに拡張した。

  4. M. Ichioka, N. Hayashi, N. Enomoto and K. Machida:
    "Vortex structure in d-wave superconductors,"
    Phys. Rev. B 53 (1996) 15316-15326. [link]

      d波超伝導体における渦糸コア構造を、自己無撞着に 得たペアポテンシャルに基づき、これまでより幅広い 温度領域において解析した。温度低下に伴う渦糸コア の収縮、d波超伝導のギャップノードを反映しコア外 へまで広がって分布する低励起の準粒子密度の空間 構造を新たに明らかにした。

  5. N. Hayashi, M. Ichioka, and K. Machida:
    "Star-shaped local density of states around vortices in a type-II superconductor,"
    Phys. Rev. Lett. 77 (1996) 4074-4077. [link]

      1990年前後にかけてBell研において行なわれた 走査型トンネル顕微鏡(STM)による磁場中超伝体 の渦糸観察において、六回対称の「星型」の空間構造 を示す起源不明のトンネルスペクトルが観測されてい た。これについて理論の側から、六回対称性をもつ 異方的超伝導ギャップのモデルを提案し、そのモデル によりそれら実験結果がよく再現出来ることを示した。

    • 1997:
  6. M. Ichioka, N. Hayashi, and K. Machida:
    "Local density of states in the vortex lattice in a type II superconductor,"
    Phys. Rev. B 55 (1997) 6565-6576. [link]

      s波超伝導体の渦糸格子状態における渦糸構造を、 自己無撞着な計算によって解析した。

  7. N. Hayashi, M. Ichioka, and K. Machida:
    "Effects of gap anisotropy upon the electronic structure around a superconducting vortex,"
    Phys. Rev. B 56 (1997) 9052-9063. [link]

      論文 [5] の本論文版。異方的超伝導ギャップ のモデルに基づき、渦糸構造をより詳細に計算し、 実験との比較を行なった。また、計算結果の電子状態 のスペクトルについて、渦糸まわりを走る準粒子の 古典的描像によって物理的解釈を与えた。

    • 1998:
  8. N. Hayashi, T. Isoshima, M. Ichioka, and K. Machida:
    "Low-lying quasiparticle excitations around a vortex core in quantum limit,"
    Phys. Rev. Lett. 80 (1998) 2921-2924. [link]

      超伝導コヒーレンス長が短い極限(原子間隔オーダ) における渦糸コアの構造を、原子間隔オーダの空間 変化を無視せず Bogoliubov-de Gennes方程式を数値的 に解くことによって調べた。特に、渦糸コア内で、 準粒子状態密度における粒子−ホール対称性の破れ が「局所的」に発生することを明らかにした。

  9. N. Hayashi, M. Ichioka, and K. Machida:
    "Relation between vortex core charge and vortex bound states,"
    J. Phys. Soc. Jpn. 67 (1998) 3368-3371. [link]

      磁場中超伝導体において形成される渦糸について、 その渦糸コアが電気的に帯電する微視的メカニズムに ついて、渦糸コア内の局所的な準粒子構造との関連性 を明らかにした。

  10. K. Machida, M. Ichioka, N. Hayashi, and T. Isoshima:
    "Vortex structure in clean type-II superconductors with s-wave and d-wave pair symmetries,"
    in "The Superconducting State in Magnetic Fields: Special Topics and New Trends,"
    edited by C. A. R. Sa de Melo,
    (Series on Directions in Condensed Metter Physics - Vol. 13, World Scientific, Singapore, 1998), Chap. 13, pp. 245 -- 271.

      書籍:論文 [1]から [8] についての総説。

    • 1999:
  11. N. Hayashi:
    "Many-body vortex effect on the transverse force acting on a moving vortex,"
    J. Phys. Soc. Jpn. 68 (1999) 3154-3157. [link]

      渦糸間に働く相互作用に関して、トポロジカルな起源 による力が作用し得る可能性について議論した。 ある渦糸が他方の渦糸のまわりを移動した際に 獲得される Berry位相を、数値的に得た厳密な準粒子 波動関数に基づいて評価することによって、上記の 力(とくに、渦糸の速度に垂直方向にはたらく力)を調べた。

    • 2000:
  12. A. G. Lebed and N. Hayashi:
    "Paramagnetic-like destructive mechanism against superconductivity in Sr2RuO4: a triplet scenario versus a singlet one,"
    Physica C 341-348 (2000) 1677-1678. [link]

      奇パリティ対称性の超伝導の発生が示唆されている 第二種超伝導物質 Sr2RuO4について、その低温域での 上部臨界磁場について議論した。実験的に観測されて いるその値と、奇パリティ対称性の場合に理論的に 予言される値とが一致し得ないことを指摘し、この 物質に対し従来提案されていた超伝導ペアリングの 対称性について再考の余地のあることを主張した。

    • 2001:
  13. C. Kawabata, N. Hayashi, and F. Ono:
    "Critical temperature Tc and charging energy Ec between B-B layers of superconducting diboride materials MgB2 in 3D JJA model,"
    J. Phys. Soc. Jpn. 70 (2001) 3184-3185. [link]

      超伝導転移温度39Kを示す超伝導物質 MgB2について これを、超伝導を起こすB層とそれらの層に挟まれた Mg層とからなる Josephson接合系としてモデル化し、 そのモデルに基づいて Mg層のMg原子を他の原子に 置換えたときに期待される 超伝導転移温度の変化に ついて議論した。

  14. Y. Kato and N. Hayashi:
    "Kramer-Pesch effect in chiral p-wave superconductors,"
    J. Phys. Soc. Jpn. 70 (2001) 3368-3376. [link]

      カイラル超伝導と呼ばれる、右巻き・左巻きの向き をもつ超伝導状態(超流動3HeのA相や、超伝導物質 Sr2RuO4で実現するとされる)において、そこでの渦 糸コアの微視的構造を自己無撞着な計算により得た。

  15. C. Kawabata, N. Hayashi, and F. Ono:
    "Critical Temperature Tc versus Charging Energy Ec in Molecular-Intercalated Fullerenes,"
    E-print cond-mat/0111230 (2001) (unpublished).

      未出版: 分子挿入型のフラーレン結晶における超伝導に対して、 Josephson-Junction-Array (JJA) モデルを提案し、その挿入分子 をより分極率の大きな分子に置換することによって JJAのチャージングエネルギーが下がり 超伝導転移温度が上昇するという可能性を議論した。

    • 2002:
  16. N. Hayashi and Y. Kato:
    "Elementary vortex pinning potential in superconductors with unconventional order parameter,"
    Physica C 367 (2002) 41-45. [link]

      磁場中超伝導体における磁束のピン止めについて、 d波超伝導とカイラル超伝導の場合について、準古典 グリーン関数法により微視的に調べた。どちらの場合 にもそのピン止めエネルギーが、通常のs波超伝導の 場合と比べて高温域で約10倍の大きさになることを 数値計算により明らかにした。また、カイラル超伝導 の場合に、クーパー対がもつ右巻き・左巻きの向きの 違いによって、ピン止めエネルギーが変化することを 解析的計算により予測した。

  17. Y. Kato and N. Hayashi:
    "Numerical study of impurity effects on quasiparticles within s-wave and chiral p-wave vortices,"
    J. Phys. Soc. Jpn. 71 (2002) 1721-1727. [link]

      カイラル超伝導体における渦糸コア内での、準粒子 の不純物散乱率を、数値的に計算した。これにより、 クーパー対の巻き(角運動量)の向き(カイラリティ と呼ばれる)と、外部から印加した磁場による磁束 の向きとが反平行の場合そしてその場合に限り、 渦糸コア内での不純物散乱が強く抑制されることを 数値計算により示した。

  18. C. Kawabata, N. Hayashi, and F. Ono:
    "Critical temperature Tc versus charging energy Ec in MgB2 and C60/CHBr3,"
    Physica C 378-381 (2002) 220-224. [link]

      超伝導転移温度に関する論文 [13] において、 そこで使用した理論的解析式としては、Josephson接合 系の帯電エネルギーEcについて1次までの展開式で あった。ここでは、それをBCS型の転移温度の表式 とのアナロジーより、Ecについて高次項まで取込んだ 形の表式へと拡張した。また一方、分子挿入型の フラーレン結晶の超伝導転移温度について、 論文 [13] のモデルに基づいて議論した。

  19. N. Hayashi and Y. Kato:
    "Elementary vortex pinning potential in a chiral p-wave superconductor,"
    Phys. Rev. B 66 (2002) 132511 (4 pages). [link]

      カイラル超伝導においてクーパー対がもつ右巻き・ 左巻きの向きの違いによってピン止めエネルギーが 変化することを、自己無撞着に得たペアポテンシャル に基づく数値計算によって明らかにし、論文 [16] の解析的予測を確認した。

    • 2003:
  20. N. Hayashi and Y. Kato:
    "Nuclear magnetic relaxation rate in the vortex state of a chiral p-wave superconductor,"
    Physica C 388-389 (2003) 513-514. [link]

      カイラル超伝導体における渦糸コア内での核磁気緩和 率を、印加磁場の方向が二次元伝導面に垂直な場合に ついて計算した。

  21. Y. Kato and N. Hayashi:
    "Physics of vortex core in chiral p-wave superconductor,"
    Physica C 388-389 (2003) 519-520. [link]

      カイラル超伝導体における渦糸コア内での準粒子散乱 の抑制ついて、第二量子化を行わず(すなわち グリーン関数法に基づかず)に、コア内準粒子の 波動関数とFermiの黄金律とに基づいて、物理的により 見とおしの良い形での説明を与えた。

  22. C. Kawabata, M. Takeuchi, N. Hayashi, F. Ono, S. R. Shenoy, and A. R. Bishop:
    "Monte Carlo study of pseudo-gap temperature T^* within JJA model,"
    Physica C 388-389 (2003) 31-32. [link]

      超伝導対関数の位相と振幅の両方を考慮した、3次元 Josephson-Junction-Array (JJA) モデルに対し、古典モンテ カルロ計算を行なった。それを高温超伝導体のモデル として考え、その超伝導転移温度と擬ギャップ温度と に相当する転移温度を計算した。それら転移温度の 間の外部電流依存性における違いについて、予言を与 えた。

  23. N. Hayashi and Y. Kato:
    "Interplay between vorticity and chirality inside the vortex core in chiral p-wave superconductors,"
    J. Low Temp. Phys. 131 (2003) 893-897. [link]

      論文 [20] のカイラル超伝導体における渦糸 コア内での核磁気緩和率の計算を、印加磁場の方向 を二次元伝導面に垂直な方向から傾けた場合について 拡張した。

  24. N. Hayashi and Y. Kato:
    "Relation between vortex pinning energy and Anderson's theorem,"
    J. Low Temp. Phys. 130 (2003) 193-206. [link]

      超伝導体中の非磁性不純物についてのAndersonの定理 と、非磁性不純物による磁場中超伝導体中の磁束 ピン止めとの間に存在する関係について議論した。 特に、その定理が破れるアンコンベンショナル超伝導 体(d波超伝導体等)の場合について、定理の破れ とそれによるピン止めエネルギーの増加を議論した。